クリーニング業で働く方の中で、プレス作業や仕分け作業中の腰の痛みに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。クリーニング業は一見デスクワークに近い印象を持たれがちですが、実際には長時間の立ち仕事、重い衣類の持ち上げ、プレス機のペダル操作など、身体的負担の大きい作業が日常的に行われています。

クリーニング業は中小規模の事業者が多く、労働安全衛生対策が十分に行き届いていないケースも少なくありません。Sacoucheらの研究(2012)では、病院クリーニング部門の作業者における人間工学的リスクが高く、特に腰部・上肢の筋骨格系症状が顕著であることが報告されています。

この記事でわかること

  • クリーニング業の各工程で発生しやすい身体的問題
  • プレス作業・仕分け・包装それぞれの身体負荷の特徴
  • 現場で実践できる具体的な改善策
  • 中小事業者でも取り組めるコスト効率の高い対策

クリーニング業の作業環境と身体負荷

工程ごとの身体負荷

クリーニング業の作業は複数の工程に分かれ、それぞれ異なる身体負荷を生じさせます。

工程主な動作身体負荷
受付・仕分け衣類の分類、持ち上げ腰部への反復的負荷、前傾姿勢
洗浄洗濯機への投入・取り出し重量物の持ち上げ、腰の捻り
プレスプレス機の操作(立位)長時間立位、ペダル操作、上肢の反復
仕上げアイロン作業、手仕上げ前傾姿勢、上肢の持続的使用
包装・出荷ハンガー掛け、ビニール包装反復的な上肢動作、立位作業

特に負担の大きいプレス作業

プレス作業は、クリーニング業の中でも最も身体負荷が大きい工程のひとつです。

  • 長時間の立位: プレス機の前での静的立位(1日6〜8時間)
  • ペダル操作: フットペダルによるプレス機の操作で片脚に負荷が偏る
  • 上肢の反復動作: 衣類のセット・取り外しの繰り返し
  • 高温環境: プレス機からの蒸気・熱による暑熱曝露

現場でよくある困りごと

  • プレス作業で1日中立ちっぱなしで、腰と足裏が限界
  • 重い毛布やカーテンの持ち運びで腰を痛めた
  • プレス機のペダルを踏む脚ばかり疲れる
  • 蒸気で暑く、夏場は体力の消耗が激しい
  • 少人数の職場で、体調不良でも休みにくい

具体的な対策・改善方法

プレス作業の改善

  • 疲労軽減マットの敷設: プレス機の前に設置し、足裏と腰への衝撃を吸収
  • 立ち椅子の導入: 作業の合間に体重を預けられるサポートデバイス
  • ペダル操作の両脚分散: 左右交互にペダルを踏む習慣づけ、または両足ペダルタイプへの変更
  • 高さ調整: プレス機の作業面が肘高に合うよう足台等で調整

重量物取り扱いの改善

  • 台車・ランドリーカートの活用: 衣類の移動は持ち上げずに転がす
  • 二人作業の推奨: 重い毛布・カーテン等は複数人で取り扱う
  • 投入口の高さ改善: 洗濯機・乾燥機の投入口の高さを最適化

作業環境の改善

  • 換気・空調の強化: プレス機周辺の排熱対策
  • 床面の整備: 滑りにくく疲労を軽減する床材の選択
  • 照明の確保: 仕上げ作業に必要な照度の確保

セルフケア

  • 腰部のストレッチ(1時間ごと)
  • 足首の回旋運動(ペダル操作の合間に)
  • 肩・上肢のストレッチ(プレス作業の休憩時)
  • 十分な水分補給(特に夏場)

職場改善チェックリスト

  • プレス機の前に疲労軽減マットを敷設しているか
  • プレス機の作業面高さは適切か
  • 重量物の二人作業ルールを定めているか
  • 台車・カートを十分に配備しているか
  • 換気・排熱対策を講じているか
  • 定期的な休憩時間を確保しているか
  • 作業者の腰痛・上肢障害の発生状況を把握しているか
  • ストレッチ方法を作業者に教育しているか

まとめ

クリーニング業は、プレスの立位作業、重量物の取り扱い、反復動作という複合的な身体負荷がかかる業種です。疲労軽減マットの敷設、立ち椅子の導入、台車の活用、ペダル操作の改善といった、比較的コスト効率の高い対策を組み合わせることで、中小規模の事業者でも職場改善を進めることが可能です。作業姿勢の見直しは、従業員の健康だけでなく、仕上がり品質の安定と人材定着にもつながります。

よくある質問

Q: クリーニング業の腰痛対策で最も手軽に始められるものは何ですか?

A: プレス機の前への疲労軽減マットの敷設が最も手軽で効果的です。1枚数千円〜1万円程度で購入でき、すぐに効果を実感できます。加えて、1時間ごとの腰部ストレッチの習慣化も推奨されます。

Q: プレス作業で片脚だけ疲れるのはなぜですか?

A: フットペダルを片脚で操作し続けることで、片側に負荷が偏るためです。左右交互にペダルを踏む習慣をつけるか、可能であれば両足ペダルタイプへの変更を検討してください。

参考文献

  1. Sacouche, D.A., Morrone, L.C., Silva-Junior, J.S., "Impact of ergonomics risk among workers in clothes central distribution service in a hospital," Work, 41 Suppl 1, 1836-1840, 2012. PMID: 22316982. DOI: 10.3233/WOR-2012-0394-1836.
  2. Norlander, S., Aste-Norlander, U., Nordgren, B., Sahlstedt, B., "Mobility in the cervico-thoracic motion segment: an indicative factor of musculo-skeletal neck-shoulder pain," Scandinavian Journal of Rehabilitation Medicine, 28(4), 183-192, 1996. PMID: 9122645.
  3. 厚生労働省, 「職場における腰痛予防対策指針」(基発0618第1号, 平成25年6月18日), 2013年改訂. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4.html
  4. 中央労働災害防止協会(JISHA), 「サービス業における労働災害防止対策」. https://www.jisha.or.jp/