労働安全衛生分野で世界最大級の見本市として知られる「A+A」が、2025年7月に日本初上陸します。「はたらく現場の環境展(JIOSH+W)」として大阪のインテックス大阪で開催されるこの展示会は、日本の労働安全衛生を国際的な視点から見つめ直す貴重な機会となります。

A+Aは1954年にドイツで始まり、70年以上の歴史を持つ国際見本市です。本記事では、A+Aの概要と、日本初開催となるJIOSH+Wの見どころを紹介します。

この記事でわかること

  • A+Aの歴史と国際的な位置づけ
  • JIOSH+W 2025(大阪)の開催概要と出展カテゴリ
  • 日本の労働安全衛生にもたらされる新しい視点
  • 来場者が注目すべきポイントと活用方法

A+Aとは何か

70年の歴史を持つ労働安全衛生の国際見本市

A+A(Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin:労働保護と労働医学)は、1954年にドイツ・デュッセルドルフで始まった労働安全衛生に特化した国際見本市です。現在は2年に1回のペースでデュッセルドルフで開催され、近年では58か国から約2,200社が出展し、140以上の国と地域から62,000人を超える来場者を迎える規模に成長しています。

A+Aが他の産業系展示会と異なるのは、「人の安全と健康」に特化している点です。機械やシステムの効率化ではなく、「働く人をどう守るか」「働く環境をどう改善するか」が展示の中心テーマとなっています。

世界5都市に広がるA+Aネットワーク

A+Aはデュッセルドルフの本展に加え、シンガポール、イスタンブール、上海、バンコクでも地域版が開催されています。大阪は5番目の開催地となり、アジア太平洋地域における労働安全衛生の情報ハブとしての役割が期待されています。

JIOSH+W 2025の開催概要

基本情報

項目内容
正式名称はたらく現場の環境展(JIOSH+W)
会期2025年7月16日(水)〜19日(土)4日間
会場インテックス大阪
主催メッセデュッセルドルフジャパン
同時開催未来モノづくり国際EXPO

出展カテゴリ

JIOSH+Wの展示は、従来の「労働安全衛生」の枠を超え、「しあわせになれる仕事場所」「はたらいていることに誇りを持てる環境」をコンセプトに掲げています。主な出展カテゴリは以下のとおりです。

個人用防護具(PPE): 安全靴、手袋、ヘルメット、保護めがね、防護服など。近年はIoTセンサーを内蔵した「スマートPPE」が注目されており、着用者のバイタルサインや環境データをリアルタイムでモニタリングできる製品が増加しています。

機能性ワークウェア: 機能性とファッション性を兼ね備えた作業着。欧州では作業着のデザイン性が労働者のモチベーションに影響するという認識が広がっており、「着たくなる作業着」というコンセプトが定着しつつあります。

ウェアラブルデバイス: 心拍数、体温、活動量などを計測するデバイス。熱中症予防や疲労管理への活用が期待されています。

アシストスーツ: 腰部、肩部、下肢など対象部位に応じた装着型サポートデバイス。欧州では産業現場での導入が日本より進んでおり、最新の技術動向を知る好機となります。

日本の労働安全衛生に新しい視点をもたらすポイント

欧州との制度比較

日本と欧州では、労働安全衛生に対するアプローチに大きな違いがあります。JIOSH+Wは、欧州の先進的な取り組みを直接知ることができる場として価値があります。

法的アプローチの違い: 欧州では、EU枠組み指令(89/391/EEC)に基づき、リスクアセスメントの実施が法的に義務化されています。日本では努力義務にとどまる部分が多く、制度面での差が存在します。

予防重視の文化: 欧州の労働安全衛生は「事後対応」より「予防」を重視する傾向が強く、人間工学的な作業設計や定期的なリスク評価が産業文化として定着しています。

投資としてのOHS: 欧州では、労働安全衛生への投資は「コスト」ではなく「リターンのある投資」として認識されています。EU-OSHAの研究では、安全衛生への投資1ユーロに対して平均2.2ユーロのリターンがあると報告されています。

大阪・関西万博との相乗効果

JIOSH+W 2025は、大阪・関西万博の会期中に開催されます。万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」と、労働安全衛生の「すべての人が健康で安全に働ける社会」という理念は通底しており、国内外から多くの専門家や企業の参加が見込まれています。

なぜ今「労働安全衛生」なのか

日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少が進んでおり、以下の観点から労働安全衛生の重要性が高まっています。

高年齢労働者の増加: 65歳以上の就業者は920万人を超え、身体的負荷への配慮がより重要になっています。転倒災害の増加や筋骨格系障害のリスク上昇は、高齢化と深く関連しています。

人材確保の競争激化: 「安全で働きやすい職場」は、人材確保の観点からも重要な差別化要因になりつつあります。

法改正の動向: 2026年に予定される労働安全衛生関連の法改正では、リスクアセスメントの義務化範囲の拡大などが見込まれており、企業の対応準備が求められます。

来場者が注目すべきポイント

産業保健担当者・安全管理者向け

  • 欧州で実績のあるPPEやリスク評価手法の最新動向を把握する
  • 自社のリスクアセスメント体制を国際基準と比較し、改善点を特定する
  • 2026年法改正に向けた対応準備の情報を収集する

現場管理者向け

  • アシストスーツやサポートデバイスの体験展示で、自社工程への適合性を評価する
  • 作業着やPPEの最新製品を比較検討する
  • 同業他社の導入事例やベストプラクティスを知る

経営層向け

  • 労働安全衛生投資のROIに関するデータを収集する
  • 健康経営と安全衛生の統合的アプローチについて知見を得る
  • 国際的な安全衛生基準への対応状況を確認する

まとめ

A+Aの日本初開催となるJIOSH+W 2025は、日本の労働安全衛生を国際的な視点から見つめ直す絶好の機会です。70年の歴史を持つ世界最大級の見本市が持ち込む「予防重視」「投資としてのOHS」という考え方は、日本の製造業や建設業をはじめとする多くの産業にとって、新たな気づきをもたらすでしょう。少子高齢化と人手不足が進む日本において、「人を守り、人を活かす」労働環境の実現は、企業の持続的成長に不可欠な要素です。

参考文献

  1. 株式会社メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン, 「はたらく現場の環境展(JIOSH+W)2025 開催概要」. https://jioshw.messe-dus.co.jp/
  2. Messe Düsseldorf, "A+A — World leading trade fair for safety and health at work". https://www.aplusa-online.com/
  3. EU-OSHA, "Estimating the cost of work-related accidents and ill-health: An analysis of European data sources", 2017. https://osha.europa.eu/sites/default/files/estimating-the-costs-of-accidents-and-ill-health-at-work.pdf
  4. 厚生労働省, 「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」, 2025年5月. https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf
  5. 総務省統計局, 「労働力調査(詳細集計)」. https://www.stat.go.jp/data/roudou/2.html