要約

重量物取扱い作業とは、人力で物を持ち上げ・降ろし・運搬・押し引きする作業の総称で、英語では "Manual Material Handling (MMH)" と呼ばれます。腰痛をはじめとする筋骨格系障害(MSDs)の主要発生要因であり、厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」が重量制限・運搬方法・教育の指針を示しています。

定義

「重量物取扱い作業とは、人力により物の持ち上げ、運搬、引上げ、引下げ、押し、引き、保持等を行う作業をいう。」

— 出典: 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」

背景・要点

腰痛は業務上疾病の中で最も多い疾病で、業務上疾病全体の約6割を占めます。発生業種は製造業・運輸交通業・保健衛生業(介護・医療)・商業など多岐にわたり、いずれも重量物取扱いが主要な要因の一つです。

「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)は、重量物取扱い作業について次の重量制限を示しています:

  • 満18歳以上の男子労働者:体重のおおむね40%以下
  • 満18歳以上の女子労働者:男子の取扱重量のおおむね60%以下(同じ重量制限の60%)
  • 頻繁に取扱う場合:男子は55%以下、女子はその60%以下

これらは「目安」であり、実際の作業ではNIOSH持ち上げ式 (RWL) やISO 11228シリーズによる詳細評価を併用することが望まれます。

実務でのポイント

  1. 発生源対策の優先:自動化・機械化(リフター・コンベア)、補助具の導入により人力取扱いそのものを減らすことを最優先します。
  2. 重量・頻度・距離の制限:指針の重量目安、頻度、移動距離を考慮し、運搬距離の短縮、重量の分割、二人作業を検討します。
  3. 作業姿勢と手順の指導:膝を曲げる、腰を反らさない、物を体に近づける、ねじらない、急激な動きを避ける、といった基本動作を教育します。
  4. 個別の体力・健康状態への配慮:高年齢労働者・妊産婦・既往歴のある労働者には軽減措置を講じます。
  5. 健康診断と早期対応:腰痛健診(配置時・定期)を実施し、有症状者には医師意見聴取と就業上の措置を行います。

参考文献

  1. 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」2013年改訂
  2. ISO 11228-1:2021 "Ergonomics — Manual handling — Part 1: Lifting, lowering and carrying"
  3. NIOSH "Applications Manual for the Revised NIOSH Lifting Equation" 1994

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