要約

VDT作業とは、ディスプレイ(VDT: Visual Display Terminal)・キーボード等の情報機器を使用する作業の総称です。長時間の同一姿勢と画面注視により、眼精疲労、頸肩腕障害、腰痛などの健康影響が知られており、厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年改訂)が予防対策を定めています。テレワークの普及により、自宅でのVDT作業も対象として再注目されています。

定義

「『情報機器作業』とは、事務所において行われる情報機器(パソコン、タブレット端末等のディスプレイ、キーボード等により構成される情報機器をいう。)を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。」

— 出典: 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(厚生労働省・基発0712第3号、令和元年7月12日)

旧称「VDT作業」は2002年の旧ガイドライン「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」で使われていた呼称で、2019年改訂で「情報機器作業」に名称変更されました。

背景・なぜ重要か

日本でのVDT作業の労働衛生対策の経緯:

  • 1985年(昭和60年):「VDT作業のための労働衛生上の指針」策定
  • 2002年(平成14年):「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(旧基発第0405001号)
  • 2019年(令和元年):「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発0712第3号)に大幅改訂
  • 2020年以降:COVID-19によるテレワーク急増で再度注目

2019年改訂の主なポイント:

  • 対象機器の拡大:デスクトップPC中心からタブレット・スマートフォン・ノートPC等を含む情報機器全般に
  • テレワーク対応:自宅等での情報機器作業も対象
  • 作業区分の見直し:単純な作業時間ではなく「拘束性」を重視
  • 健康診断の精緻化:眼科学的検査・筋骨格系検査の項目を整理

特にCOVID-19後のテレワーク普及により、自宅でのVDT作業環境(不適切な机・椅子、不十分な照明)が新たな労働衛生課題として浮上しています。

関連する法令・規格・制度

  • 労働安全衛生法 第65条の3:作業の管理
  • 労働安全衛生法 第66条:健康診断
  • 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(基発0712第3号、令和元年7月12日)
  • 事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)
  • テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)
  • JIS Z 8513:1994:人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-視覚表示装置の要求事項
  • ISO 9241シリーズ:人間工学-人とシステムとのインタラクション

作業区分と対策

ガイドラインでは情報機器作業を3つに分類しています:

  1. 作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの 一日の作業時間が4時間以上、相当程度拘束されている作業。健康診断(配置前+定期)の対象。

  2. 作業時間又は作業内容に拘束性があり、かつ、相当な作業負荷が予測されるもの 情報機器作業を行う者で、1日の作業時間がそれ以下の者。自覚症状の有無で対応。

  3. その他 一般事務、情報機器作業の頻度・時間が少ない者。

実務でのポイント

  1. 作業環境の整備

    • 机・椅子の高さ調整、画面距離(40cm以上)、照度(150〜500ルクス)、画面の眩しさ防止
    • キーボード・マウスの位置、ヘッドホン・スピーカーの音量
  2. 作業時間管理

    • 1日の連続作業時間は1時間を超えないようにする
    • 作業休止時間を10〜15分設ける
    • 連続作業の合間に1〜2回の小休止を設ける
  3. 作業姿勢

    • 目線がやや下向き、肘90度、足底全体で接地
    • 椅子の背もたれを使い腰部を支える
  4. 健康診断

    • 配置前と定期(1年以内ごとに1回)の健康診断
    • 眼科学的検査(屈折・視力・調節機能・眼位)
    • 筋骨格系検査(頸部・肩・上肢・腰部)
  5. テレワーク対応

    • 自宅環境のチェックリスト提供
    • 必要な機器(モニター・キーボード・椅子等)の支給または補助
  6. 教育・研修

    • 新規従事者・配置転換者への安全衛生教育
    • 自覚症状のセルフチェック方法
  7. ストレッチ・体操

    • 1時間ごとの軽いストレッチ・体操の習慣化

よくある誤解・落とし穴

  • 誤解1: 「VDT作業はもう古い概念」 — 名称は変わりましたが、概念と対策は重要なまま継承されています。
  • 誤解2: 「事務職だけが対象」 — 製造業の制御室、医療現場の電子カルテ、教員の授業準備など、ほぼ全業種に及びます。
  • 誤解3: 「テレワークは事業者の責任外」 — 自宅での情報機器作業も事業者の安全配慮義務の対象です。
  • 誤解4: 「健康診断さえすればよい」 — 作業時間管理・環境整備・教育を含めて対策が必要です。
  • 誤解5: 「ノートPC1台あれば十分」 — ノートPCのみの長時間作業は人間工学的に不適切です。外付けモニター・キーボードの使用が推奨されます。

参考文献

  1. 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン
  2. 厚生労働省「情報機器作業の健康影響と対策
  3. 中央労働災害防止協会「情報機器作業における労働衛生管理」
  4. JIS Z 8513:1994
  5. 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン

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