2025年6月10日から13日まで東京ビッグサイトで開催された「FOOMA JAPAN 2025(国際食品工業展)」では、自動化やAIだけでなく、「作業者の身体負荷軽減」が新たな注目テーマとして浮上しました。食品製造現場では長時間の立ち作業が常態化しており、人手不足が深刻化する中、作業者の健康維持と生産性向上の両立が喫緊の課題となっています。
本記事では、FOOMA JAPAN 2025を通じて見えた食品業界の人間工学トレンドと、現場が抱える課題の解決に向けた最新の動向を紹介します。
この記事でわかること
- 食品製造現場における立ち作業の課題と人間工学的リスク
- FOOMA JAPAN 2025で注目された作業負荷軽減の技術動向
- 食品工場が取り組むべき人間工学的アプローチの具体例
食品製造現場が抱える人間工学的課題
立ち作業の常態化
食品工場や包装ラインでは、作業の大部分が立位で行われます。検品、仕分け、盛り付け、包装といった工程は、立ったまま前かがみの姿勢を長時間維持することが求められ、腰や膝、足首への負担が蓄積しやすい環境です。
厚生労働省の労働者健康状況調査(平成24年)等では、食品製造業を含む製造業の労働者に腰痛等の自覚症状を訴える割合が高く、全産業平均を上回る水準にあることが報告されています。特に、以下のような作業特性が身体的負荷を増大させています。
- 微細な動作を伴う静的立位: 食品の検品や選別では、目視確認のために前傾姿勢が続く
- 反復作業: 同じ動作を何百回、何千回と繰り返す包装・盛り付け作業
- 低温環境: 冷蔵・冷凍庫内での作業は、筋肉の硬直や血行不良を促進する
- 衛生管理上の制約: 椅子の設置が難しく、作業姿勢の選択肢が限られる
人手不足が問題を深刻化
食品製造業は慢性的な人手不足に直面しています。有効求人倍率は他産業と比較して高水準にあり、特に若年層の確保が困難な状況です。このため、一人あたりの作業量が増加し、休憩時間の確保が難しくなるという悪循環が生じています。
さらに、身体的負担が原因で離職する作業者も少なくなく、「腰が痛くて続けられない」「足がむくんでつらい」といった声が現場から上がっています。人材の定着率を高めるためにも、作業環境の人間工学的改善は経営課題として重要性を増しています。
FOOMA JAPAN 2025で見えた3つのトレンド
1. 「人を支える」技術への注目
FOOMA JAPANはこれまで、食品加工機械や包装システム、品質管理技術が展示の中心でした。2025年の展示会では、それに加えて「作業者の身体をサポートする製品・技術」がスタートアップゾーンを中心に出展され、来場者の関心を集めました。
具体的には、以下のようなカテゴリの製品が注目されています。
- スタンディングレスト(立位サポート): 立ったまま体重を分散させるサポートデバイス
- パワーアシストスーツ: 腰や肩の負荷を軽減する装着型デバイス
- 疲労軽減マット: 長時間の立位による足裏への負荷を緩和するマット
- 作業姿勢モニタリングシステム: センサーで作業者の姿勢を計測し、リスクを可視化
これらの製品は、自動化では対応しきれない「人の手が必要な工程」において、作業者の身体負荷を軽減するソリューションとして位置づけられています。
2. 体験型展示による導入ハードルの低下
従来の展示会では、カタログやプレゼンテーションによる情報提供が主流でした。しかし、FOOMA JAPAN 2025では、来場者が実際に製品を装着・体験できるブースが増加しました。
体験型展示のメリットは、導入担当者が「自分の身体で効果を実感できる」点にあります。データや仕様書だけではイメージしにくい装着感や作業性を、その場で確認できることで、社内への提案がスムーズになります。
3. 安全衛生対策と生産性向上の統合的アプローチ
食品業界では、働き方改革と安全衛生対策がこれまで別々のテーマとして扱われてきました。しかし、FOOMA JAPAN 2025では、「作業者の健康維持が生産性向上に直結する」という考え方が広まりつつあることが感じられました。
具体的には、プレゼンティーズム(出勤していても生産性が低下している状態)への対策として、作業環境の人間工学的改善が提案されるケースが増えています。腰痛や足の疲労を抱えたまま作業を続けることで、集中力の低下やミスの増加が生じ、結果として品質管理コストの上昇につながるという問題意識です。