要約
石綿障害予防規則(通称「石綿則」)とは、労働安全衛生法に基づき、石綿(アスベスト)による中皮腫・肺がん・石綿肺等の健康障害を予防することを目的とした厚生労働省令で、特に建築物の解体・改修工事における規制が中心となっています。
定義
「石綿障害予防規則は、労働安全衛生法第22条等の規定に基づき、石綿による労働者の健康障害の防止について事業者が講ずべき措置を定めるものである。」
— 出典: 石綿障害予防規則
背景・要点
石綿は耐熱性・断熱性・耐薬品性に優れることから、20世紀後半まで建築材料として広く使用されましたが、吸入により中皮腫・肺がん・石綿肺等の重篤な疾患を引き起こすことが明らかとなり、2006年に製造・使用等が全面禁止されました。
しかし過去に施工された建築物には大量の石綿含有建材が残存しており、その解体・改修工事で労働者と周辺住民が石綿粉じんにばく露するリスクがあります。中皮腫の潜伏期間は20〜50年と非常に長いため、現在も新規発症が継続しています。
主な措置義務(特に建築物解体・改修工事):
- 事前調査:解体・改修工事前に建材の石綿含有有無を調査し、結果を労働基準監督署と自治体に報告(2022年4月以降、一定規模以上)
- 作業計画の作成:石綿の種類・量・除去方法等を記載した作業計画
- 石綿作業主任者の選任
- 石綿障害予防規則に基づく作業区分:レベル1(吹付け石綿)、レベル2(石綿含有保温材等)、レベル3(その他成形板等)に応じた措置
- 養生・隔離・負圧除じん装置:レベル1・2では負圧隔離養生
- 特殊健康診断:石綿業務従事労働者には6か月以内ごとに健診、結果を40年間保存
- 作業の記録:作業状況・労働者氏名等を40年間保存
- 健康管理手帳制度:離職後も国費で健診を継続できる
2022年・2023年と段階的に規制強化が行われており、事前調査資格者制度の導入、罰則強化等が実施されています。
実務でのポイント
- 事前調査の徹底:1982年以前の建築物では石綿使用の可能性が高いため、必ず事前調査を実施します。
- 資格者による調査:2023年10月以降、一定規模以上の事前調査は「建築物石綿含有建材調査者」等の資格者が実施することが必要です。
- レベルに応じた工法選定:レベル1・2では負圧隔離養生・湿潤化・呼吸用保護具着用を徹底します。
- 石綿作業主任者の選任と職務遂行:技能講習修了者を選任し、指揮・点検を行わせます。
- 記録の40年保存:作業記録・健診記録は40年保存し、退職後の健康管理手帳交付に備えます。
- 周辺住民への配慮:解体現場の養生・粉じん飛散防止を徹底し、苦情対応窓口を設けます。
参考文献
- 石綿障害予防規則
- 厚生労働省「アスベスト(石綿)情報」
- 中央労働災害防止協会「石綿作業主任者テキスト」