「日本人は姿勢が悪い」と言われることがありますが、実際のところ日本人の姿勢はどのような状態にあるのでしょうか。AI 姿勢分析サービスを提供する株式会社 Sapeet は 2025 年 2 月、約 2,400 名の日本人を対象とした姿勢データ分析結果を公表しました(Sapeet, 2025)。年代別の猫背・ストレートネック割合や、男女別の O 脚・X 脚傾向など、立ち仕事に関連する示唆が多く含まれています。

本記事では、Sapeet 2025 調査の実データを中心に、日本人の姿勢の実態と立ち仕事との関連を解説します。

この記事でわかること

  • Sapeet 2025 調査(日本人 2,400 名)の概要と方法
  • 年代別のストレートネック・猫背の割合
  • 男女別の O 脚・X 脚の傾向
  • 姿勢の崩れが健康に及ぼす影響(頚椎負荷・心理面)
  • 立ち仕事の現場で意識したい姿勢改善のポイント

調査の概要

対象と方法

Sapeet 2025 調査の概要は以下のとおりです(Sapeet, 2025)。

  • 対象者:2,400 名(男性 838 名、女性 1,562 名)
  • 調査期間:2023 年 7 月 25 日 ~ 2024 年 10 月 10 日
  • 計測方法:AI 姿勢分析サービス「シセイカルテ」による立位正面・立位左側面の分析
  • 分析項目:O 脚・X 脚、頭部前傾(ストレートネック)、猫背度合い等

姿勢分類の用語

本記事では Sapeet 2025 が用いる主要分類に加え、立ち仕事の現場で目にする代表的な姿勢類型を補足します。姿勢類型の定義は Kendall ら(2005)の標準教科書に準拠しています。

姿勢タイプ特徴
理想的な姿勢耳・肩・股関節・膝・外くるぶしが一直線上(矢状面)
前方頭位(ストレートネック型)頭部が肩の前方に突出
猫背(胸椎後弯増強型)背中が丸まり、肩が前方に巻き込まれる
反り腰(腰椎前弯増強型)腰が過度に反り、骨盤が前傾
スウェイバック骨盤が前方に押し出され、胸椎が後方に位置

Sapeet 2025 調査の主要結果

O 脚・X 脚は男女で傾向が逆転

下肢アライメントに男女差がはっきり現れました(Sapeet, 2025)。

項目男性女性
O 脚傾向53.3%38.5%
X 脚傾向8.7%15.2%

男性は過半数が O 脚傾向を示す一方、女性は X 脚傾向の割合が男性の倍近くに達しました。立ち仕事の負荷分散や靴の摩耗パターンの観点で留意したい差です。

ストレートネックは 20 代が最も高い

頭部前傾(ストレートネック)の割合は、若年層で特に高くなりました(Sapeet, 2025)。

  • 20 代:55.5%
  • 30 代:44.5%

Sapeet は考察で、スマートフォンやパソコンの長時間使用、いわゆる「仙骨座り(ずっこけ座り)」によって骨盤後傾が慢性化し、頭部前傾を招きやすいと指摘しています(Sapeet, 2025)。頭部前傾が深くなるほど頚椎にかかる応力は増大し、前傾 15° で約 12 kg、30° で約 18 kg、60° で約 27 kg に達するとされます(Hansraj, 2014)。

猫背傾向は全年代で高く、高齢ほど顕著

猫背度合い(胸椎後弯の増強)は全年代で半数を超え、特に高齢層で割合が増加しました(Sapeet, 2025)。

年代猫背傾向
10 代以下55.3%
20 代70.8%
30 代62.9%
40 代65.9%
50 代59.8%
60 代69.9%
70 代以上84.0%

20 代の猫背傾向(70.8%)が 10 代以下(55.3%)を上回っているのが特徴的で、デジタルデバイス中心の生活習慣が早い段階から姿勢に影響している可能性を示します。

姿勢の崩れが健康に及ぼす影響

頚椎への機械的負荷

ストレートネック(頭部前傾)では、頭部の重み(平均約 4.5 ~ 5.5 kg)がテコの原理で頚椎に増幅して伝わります。Hansraj(2014)の生体力学モデルでは、頭部前傾角度と頚椎にかかる荷重の関係が下表のように試算されています。

前傾角度頚椎にかかる実効荷重
0°(中立)約 4.5 ~ 5.5 kg
15°約 12 kg
30°約 18 kg
45°約 22 kg
60°約 27 kg

この荷重が長時間繰り返されると、頚椎周囲の筋緊張や椎間板への圧力増加につながります。

姿勢と心理状態

Nair ら(2015)が Health Psychology 誌に報告したランダム化比較試験では、74 名の参加者を「直立姿勢」と「前かがみ姿勢」に無作為割付し、Trier 社会的ストレステストを実施しました。その結果、直立姿勢群はエネルギッシュさや自尊感情が有意に高く、前かがみ姿勢群は受動的・恐れを感じる傾向が強いと報告されています。姿勢は単なる見た目の問題ではなく、ストレス応答や気分にも関与することが示唆されます。

呼吸・筋骨格系への影響(一般的知見)

猫背姿勢では胸郭の可動性が低下し、横隔膜の動きが制限されることで呼吸が浅くなりやすいとされます。また頭部前傾は頚部・肩甲帯の筋緊張を高め、慢性的な肩こり・頭痛のリスクを高めることが臨床で広く観察されます(Kendall et al., 2005)。

立ち仕事の現場で意識したい姿勢改善のポイント

理想的な立位姿勢のチェックポイント

Kendall ら(2005)に記載されている矢状面からの目安は以下のとおりです。

  1. 耳の穴肩の中心(肩峰)の真上にある
  2. 肩峰股関節(大転子)の真上にある
  3. 股関節膝の中心の真上にある
  4. 膝の中心外くるぶしのわずか前方にある
  5. 骨盤はニュートラル(過度な前傾・後傾がない)

立ち仕事で取り入れたい習慣

Sapeet 2025 の結果が示すように、若年層から猫背・ストレートネックが既に定着しているため、休憩時の姿勢リセットを早期から習慣化することが重要です。

  • 作業台の高さ調整:肘の高さ前後に合わせ、前傾姿勢の常態化を防ぐ
  • 30 分ごとの姿勢リセット:胸を開く・顎を引く動作を 30 秒ほど行う
  • 適切な靴の選択:厚底で硬すぎるソール・極端なヒールは避け、足底全体で接地できるものを
  • 座り方の見直し:仙骨座り(ずっこけ座り)を避け、坐骨結節に均等に荷重

姿勢改善のためのエクササイズ

  • チンタック:あごを水平に引く運動(前方頭位の改善)
  • 胸椎伸展ストレッチ:フォームローラーで胸椎を伸ばす(猫背の改善)
  • 体幹トレーニング:プランク、ドローイン等で体幹の安定性を強化

まとめ

Sapeet 2025 の 2,400 名 AI 姿勢分析は、20 代でストレートネック傾向が 55.5%、猫背傾向が 70.8%と、若年層の段階で姿勢の偏りが既に広く定着している実態を明らかにしました。男女では O 脚・X 脚の傾向が逆転し、高齢層ほど猫背傾向が強まる(70 代以上で 84.0%)という年齢依存性も確認されています。

姿勢の崩れは頚椎への機械的負荷(Hansraj, 2014)や心理的ストレス応答(Nair et al., 2015)にも関与し、単なる美容の問題にとどまりません。自分の姿勢傾向を把握し、立ち仕事の合間にリセット習慣を取り入れることが、長期的な筋骨格系リスクの低減につながります。

参考文献

  1. 株式会社 Sapeet、「2,400 人の AI 姿勢分析から見える現代日本の姿勢実態調査レポート」、PR TIMES プレスリリース、2025 年 2 月 21 日公開. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000026498.html
  2. Hansraj, K.K. "Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head," Surgical Technology International, 25, 277-279, 2014. PMID: 25393825.
  3. Nair, S., Sagar, M., Sollers, J. 3rd, Consedine, N., Broadbent, E. "Do slumped and upright postures affect stress responses? A randomized trial," Health Psychology, 34(6), 632-641, 2015. doi:10.1037/hea0000146. PMID: 25222091.
  4. Kendall, F.P., McCreary, E.K., Provance, P.G., Rodgers, M.M., Romani, W.A. Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain, 5th ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005. ISBN: 978-0781747806.