要約

業務上疾病とは、業務に起因して発症した疾病で、労働基準法施行規則別表第1の2に列挙される疾病を中心に労働者災害補償保険(労災保険)の補償対象となります。物理的因子・化学物質・粉じん・身体的負荷・心理的負荷など発症要因別に分類されています。

定義

「業務上の疾病とは、労働者の業務に起因して発症した疾病であって、労働基準法施行規則別表第1の2に掲げるものをいう。」

— 出典: 労働基準法 第75条、労働基準法施行規則 別表第1の2

背景・要点

業務上疾病は労働基準法施行規則別表第1の2で次のように分類されています:

  1. 業務上の負傷に起因する疾病
  2. 物理的因子による疾病:振動障害、騒音性難聴、電離放射線障害、熱中症、潜函病、減圧症 等
  3. 身体に過度の負担のかかる作業による疾病:腰痛、頸肩腕症候群、関節障害 等
  4. 化学物質等による疾病:有機溶剤中毒、金属中毒、ガス・蒸気・粉じん吸入による疾病 等
  5. 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症
  6. 細菌、ウイルス等の病原体による疾病
  7. がん原性物質または がん原性因子・がん原性工程による疾病:石綿関連疾患、ベンゼンによる白血病 等
  8. 長期間にわたる長時間業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳・心臓疾患:過労死の原因疾患
  9. 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神疾患:精神障害労災
  10. その他業務に起因することの明らかな疾病

業務上疾病として認定されると、療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償等の労災保険給付が受けられます。代表的な業務上疾病として、毎年最も多いのは「腰痛」(業務上疾病全体の約6割)です。

実務でのポイント

  1. 発症時の早期対応:労働者の健康相談・産業医面談・医療機関受診を促し、必要に応じて労災申請を支援します。
  2. 作業との関連性の確認:発症原因となった作業内容・期間・有害因子を整理します。
  3. 記録の整備:作業環境測定結果、特殊健診結果、作業記録等を保存し、認定請求時の証拠とします。
  4. 再発防止対策:個別ケースを分析し、職場全体の予防対策に反映します。
  5. 特殊健診の確実な実施:有害業務従事者には特殊健診を法定どおり実施し、早期発見・早期対応につなげます。
  6. 長期潜伏疾患への対応:石綿関連疾患・職業がん等は離職後数十年を経て発症することがあるため、健康管理手帳制度を活用します。

参考文献

  1. 労働基準法施行規則 別表第1の2
  2. 厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査
  3. 厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(年次報告)

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