要約

個人ばく露測定とは、労働者の襟元など呼吸域に試料採取器を装着し、作業全体を通じた労働者個人の有害物ばく露濃度を測定する手法です。場の濃度を測るA測定・B測定とは異なり、個人の実ばく露を直接評価できます。

定義

「個人ばく露測定は、労働者の呼吸域に近い位置(襟元等)に試料採取機器を装着し、作業時間を通じて当該労働者がばく露した有害物質の濃度を測定する方法をいう。」

— 出典: 厚生労働省「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」

背景・要点

従来の作業環境測定(A測定・B測定)は作業場所の代表点や高濃度発生個所の濃度を測定する「場の測定」であり、労働者個人の実ばく露濃度を必ずしも反映しないという課題がありました。化学物質の自律的管理体制への移行に伴い、労働者個人のばく露が濃度基準値を超えないことを確認する手段として個人ばく露測定の重要性が高まっています。

特に以下のケースで個人ばく露測定が活用・義務化されます:

  • 第三管理区分が継続する作業場所:2024年4月以降、A測定・B測定で第三管理区分と判定された場所では、個人ばく露測定の実施と保護具着用管理責任者の選任、保護具の有効性確認が義務付けられました。
  • 自律的管理対象物質:濃度基準値が設定された物質について、ばく露が基準値以下であることを個人ばく露測定で確認します。
  • 作業環境測定の代替:一定の条件下でA測定の代わりに個人サンプリング法を用いることが認められます。

実務でのポイント

  1. 試料採取機器の正しい装着:労働者の襟元など呼吸域に近い位置にサンプラーを固定し、作業の妨げにならないように装着します。
  2. 8時間時間加重平均(8hTWA)の評価:1作業日全体を通じて測定し、濃度基準値(8時間値)と比較します。短時間ばく露限界値とも比較するため、必要に応じて短時間(15分)の測定も実施します。
  3. 作業環境測定士・分析機関との連携:第1種・第2種作業環境測定士による実施、または登録分析機関への委託が望まれます。
  4. 記録の保存と労働者への通知:測定結果は3年(特定化学物質の一部は30年)保存し、結果と意味を労働者に通知します。
  5. 改善対策との連動:基準値超過時は工学的対策(局所排気装置等)や作業方法の見直しを優先し、保護具は最後の手段とします。

参考文献

  1. 厚生労働省「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針
  2. 厚生労働省「作業環境測定基準(個人サンプリング法)
  3. 日本作業環境測定協会「個人サンプリング法ガイドブック」

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