毎年夏になると、職場における熱中症による労働災害が後を絶ちません。厚生労働省のデータによると、2024年の職場での熱中症死傷者数は1,257人にのぼり、死亡者数も31人と深刻な状況が続いています。

特に注目すべきは、業種によって熱中症の発生リスクが大きく異なるという点です。建設業、製造業、警備業など、それぞれの業種には特有の危険要因があります。本記事では、厚労省の報告書データに基づき、主要業種別の熱中症リスクと対策を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 業種別の熱中症死傷者数の実態
  • 建設業・製造業・警備業・運輸業の業種特有のリスク要因
  • 各業種で推奨される具体的な熱中症対策
  • 業種横断的に共通する基本対策

業種別の熱中症死傷者数(2024年データ)

厚生労働省が公表した2024年の業種別データは以下のとおりです。

業種死傷者数死亡者数全体に占める割合
製造業235人5人18.7%
建設業228人10人18.1%
運輸交通業約130人3人約10%
警備業約90人4人約7%
その他約574人9人約46%

製造業と建設業の2業種だけで全体の約4割を占めており、死亡者数では建設業が最多の10人となっています。

建設業:屋外作業と高温曝露のリスク

作業環境の特徴

建設業は屋外での作業が中心となるため、日射や気温の影響を直接受けます。夏場のアスファルトや鉄骨、コンクリートからの照り返しにより、体感温度が40℃を超えることも珍しくありません。高所作業や解体、舗装といった身体的負荷の高い作業も多く、体力の消耗が激しいのが特徴です。

推奨される対策

  • 暑熱環境改善: 日よけテントやミストシャワー、散水の活用
  • WBGT値に基づく管理: 28℃を超えた場合は作業を中断し、休憩を優先
  • 休憩所の冷房整備: 冷房付き休憩所を現場近くに設置し、体を横にできるスペースを確保
  • 服装と装備: 通気性の良い作業服、遮熱素材のヘルメットカバー、クールベストの導入
  • 暑熱順化の徹底: 新規入場者には数日かけて段階的に作業を割り当てる

製造業:屋内でも安心できない高温ストレス

作業環境の特徴

一見涼しそうな屋内作業ですが、製造現場にはボイラーや炉、高温の成形機器などの発熱源が多数あります。大規模な工場では空調が全体に行き渡らないことも多く、局所的に非常に高温になるエリアが存在します。また、化学防護服や保護具の着用が体温放散を妨げるケースもあります。

推奨される対策

  • 局所冷房の導入: スポットクーラーや冷風扇を高温エリアに設置
  • 遮熱対策: 炉や高温機器周辺に遮熱パネルや遮熱カーテンを設置
  • 作業ローテーション: 高温エリアでの連続作業時間を制限し、作業者をローテーション
  • WBGT常時モニタリング: 工場内の複数地点にWBGT測定器を設置し、リアルタイムで監視

警備業:長時間の屋外立位と見過ごされるリスク

作業環境の特徴

交通誘導やイベント警備など、屋外で長時間立位を維持する業務が多い警備業では、熱中症リスクが高いにもかかわらず対策が不十分なケースが見られます。制服の着用義務があり、涼しい服装への変更が難しいこと、持ち場を離れにくいことが、リスクを高める要因となっています。

推奨される対策

  • 定時休憩の厳守: 持ち場を離れられる交代要員を確保し、定期的な休憩を確実に実施
  • 携帯型冷却装備: ネッククーラー、冷却ベスト、携帯扇風機の配備
  • 水分補給ポイント: 持ち場の近くに飲料水を常備
  • 体調管理の巡回: 巡回管理者が定期的に作業者の体調を確認

運輸交通業:車内の高温と荷役作業の複合リスク

作業環境の特徴

トラックの荷台やコンテナ内は密閉空間で換気が悪く、夏場には50℃以上に達することがあります。荷積み・荷降ろし作業は身体的負荷が高く、短時間で大量の発汗が起こるリスクがあります。

推奨される対策

  • 荷役前の車内温度確認: コンテナやトラック荷台の温度を確認してから作業を開始
  • 荷役時間の分散: 高温時間帯を避けた荷役スケジュールの調整
  • 休憩環境の確保: 配送先でも冷房の効いた休憩場所を確保
  • 携帯型WBGT計の活用: ドライバーが携帯できる小型のWBGT測定器を配備

業種横断的な基本対策

業種を問わず、以下の基本対策はすべての事業場で実施すべきです。

  1. WBGT値の測定と管理: 作業場所でのWBGT値を定期的に測定し、基準値に基づく作業管理を行う
  2. 水分・塩分の提供: 十分な量の飲料水と経口補水液等を備え付ける
  3. 休憩場所の確保: 冷房の効いた休憩場所を作業場所の近くに設置する
  4. 安全衛生教育: 全作業者を対象に、熱中症の症状・応急処置・予防策の教育を実施する
  5. 暑熱順化の実施: 新規配属者や休暇明けの作業者に段階的な順化措置を行う

まとめ

熱中症対策は、業種ごとの特有のリスク要因を正しく理解し、それぞれに適した対策を講じることが重要です。厚労省の統計データが示すとおり、建設業と製造業は特にリスクが高く、重点的な対策が求められます。業種特有のリスクに対応しつつ、WBGT管理や水分補給、教育といった基本対策を着実に実施していきましょう。

よくある質問

Q: 自社の業種が表に含まれていない場合は対策不要ですか?

A: いいえ。業種を問わず、WBGT値28℃以上または気温31℃以上の環境で作業させる場合は対策が法的に義務付けられています。農業、小売業、医療業など、すべての業種が対象です。

Q: 業種別の対策と基本対策はどちらを優先すべきですか?

A: まず基本対策(WBGT測定、水分提供、休憩確保、教育)を整備したうえで、業種特有のリスクに対応する追加対策を講じてください。

参考文献

  1. 厚生労働省「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」(2025年5月30日公表). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58389.html / 別添1 PDF: https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001496330.pdf
  2. 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日基発0420第3号、2021年改正). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18668.html
  3. 建設業労働災害防止協会「熱中症予防対策」(リーフレット・調査研究報告等), 2024年. https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/leaflet/index.html
  4. 中央労働災害防止協会「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」. https://www.jisha.or.jp/info/campaign/neccyusho/

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