要約
過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)とは、過労死等を防止することの重要性に対する国民の自覚を促し、過労死等防止対策を効果的に推進するため、2014年に制定された法律です。基本理念、国・自治体・事業主の責務、大綱、調査研究、啓発活動等を定めています。
定義
「この法律は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること並びに過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする。」
— 出典: 過労死等防止対策推進法 第1条
背景・要点
「過労死」は1980年代から社会問題化し、日本独特の現象として国際的にも「Karoshi」として認知されています。電通事件(1991年)、ワタミ事件(2008年)等の社会的関心の高い事案を受けて2014年に過労死等防止対策推進法が議員立法で成立、同年11月に施行されました。
法律の主な内容:
- 目的・基本理念:過労死等の防止対策の推進
- 国・地方公共団体・事業主・国民の責務
- 大綱:政府が策定する「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(5年ごとに見直し)
- 調査研究:過労死等の実態、関連諸外国の制度等の調査
- 啓発:11月を「過労死等防止啓発月間」とし、シンポジウム・ポスター等で啓発
- 相談体制の整備
- 民間団体の活動への支援
- 協議会:過労死等防止対策推進協議会の設置
「過労死等」の定義(法第2条):
- 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
- 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
- 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患または精神障害
第一次大綱(2015年)以降、第二次(2018年)、第三次(2021年)、第四次(2024年)と5年ごとに改定され、調査結果を反映した数値目標が設定されています。
実務でのポイント
- 過労死等の定義を理解:脳・心疾患のみならず、精神障害・自殺も対象です。
- 長時間労働の管理:労働時間の客観的把握と上限規制(時間外労働月45時間・年360時間原則、特別条項上限)の遵守。
- 面接指導制度の活用:月80時間超の時間外労働者への面接指導を確実に実施。
- メンタルヘルス対策:ストレスチェック、4つのケア、職場環境改善を計画的に推進。
- 大綱の数値目標の参照:政府の数値目標を自社の取組み目標に落とし込みます。
- 啓発月間の活用:11月の啓発月間に社内研修・周知を実施。
- 民事責任への留意:労災認定だけでなく、安全配慮義務違反による民事損害賠償リスクがあります。
参考文献
- 過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)
- 厚生労働省「過労死等防止対策」
- 厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(年次報告)