要約
化学物質のリスクアセスメントとは、化学物質の危険性・有害性と労働者のばく露状況からリスクを見積もり、必要なリスク低減措置を決定する一連の手続きです。労働安全衛生法第57条の3により、SDS交付義務対象物質(リスクアセスメント対象物質)を取り扱う事業者に法的義務として課されています。
定義
「事業者は、SDS交付義務対象物について、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて労働者の危険または健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」
— 出典: 労働安全衛生法 第57条の3
背景・要点
化学物質によるリスクアセスメントは2016年6月から義務化されましたが、2024〜2026年にかけて対象物質が大幅拡大されています:
- 2023年4月:674物質
- 2024年4月:896物質
- 2025年4月:約2,300物質
- 2026年4月:約2,900物質まで拡大予定
実施は次のステップで進めます:
- 対象物質の特定:取扱物質のSDSを確認し、リスクアセスメント対象物に該当するか判定。
- 危険性・有害性の特定:SDS のGHS分類・有害性情報を確認。
- ばく露量の見積り:作業環境測定、個人ばく露測定、コントロール・バンディング、CREATE-SIMPLE 等で見積る。
- リスクの見積り:濃度基準値や許容濃度と比較してリスクを判定。
- リスク低減措置の決定:本質安全設計>工学的対策>管理的対策>個人用保護具の優先順位で対策を選定。
- 記録と労働者周知:実施結果を3年間(がん原性物質は30年)保存し、労働者に周知。
リスクアセスメントは新規導入時、作業手順変更時、新たな危険有害性情報入手時に実施が必要です。
実務でのポイント
- SDSの最新化:取り扱う化学物質のSDSを定期的に最新版に更新し、危険有害性情報を確認します。
- 適切なツールの選択:定量測定が困難な場合はCREATE-SIMPLE、ECETOC TRA、コントロール・バンディング等の簡易ツールを活用します。
- 化学物質管理者の選任:2024年4月以降、リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場では化学物質管理者の選任が義務付けられています。
- 濃度基準値との比較:自律的管理対象物質では濃度基準値以下となるよう対策を講じます。
- 対策の優先順位:保護具に頼らず、工学的対策(局所排気装置等)を優先します。
- 記録と見直し:実施記録を保存し、定期的(少なくとも年1回)に見直します。
参考文献
- 厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」
- 厚生労働省「CREATE-SIMPLE」
- 厚生労働省「化学物質のリスクアセスメント実施支援」